衣服に付着した煙草の匂い、という問題

 これは結構繊細な問題だと思う。もし副流煙ならば、吸い込んだ人は必ず健康的な被害を受ける。だから、喫煙者に対する厳しい規制が社会的に正当化される。しかし、匂いについては微妙かもしれない。衣服に付着した匂いが(非喫煙者に対して)健康的な被害を及ぼすことを実証した研究は存在するのだろうか?*1もし存在しないとすれば、「副流煙」の問題と「匂い」の問題は、分けて考えるべきだとは思う。

 たとえばものすごく肥満体の人が夏場に汗をかいていると、かなり不快な異臭がしばしば発生する。あるいは、香水をむんむんにつけた女性に近づくと、思わず吐きそうになってしまう。また、豚の腐臭をまき散らす豚骨ラーメン屋…などなど。もし「衣服に付着した煙草の匂い」が健康に対する実害を及ぼさないのであれば、それは「健康」とは別のコンテクスト、つまりこの種の「匂いが及ぼす不快感を社会的にどうマネッジするか」という問題として考える必要がある。

 この種の「匂いのマネッジ」問題は、比較的繊細だ。健康に対する実害が無いならば、「煙草の匂いが一切してはダメ!」という主張を無条件に正当化する根拠はなくなり、むしろ「香水臭いおばさんをどう扱うか」という「各人の利害の調整」的な話になってしまうからだ。もっとも、「香水おばさん」が嫌われるように、煙草の匂いをまき散らす人が皆から避けられても当然だとは思うけれども。*2

*1:誰か教えてください。

*2:もちろん、サッと脱臭できる装置が開発されたならば、それが(喫煙者にとっても非喫煙者にとっても)一番望ましいのだろうけれども。