社会関係資本をめぐる格差拡大

 本来,社会関係資本は経済資本や文化資本とは相対的に独自でありうる.リーらも「70年代は二つのタイプの社会関係資本に分化しており,それぞれ異なる階層に強く根付いていた」と述べているが,それはまさにP.ウィリス(1977)が『ハマータウンの野郎ども』に描いた”野郎ども”の生活世界そのものであろう.彼らが経済資本においても文化資本においても不利な立場に置かれながら,その位置にあえて留まり,客観的には階層の再生産への寄与を,主観的には誇りある生活を続けた背景には,彼らの親密な仲間関係に体現される社会関係資本があったと考えられる.これに比すれば,近年生まれているのは,社会関係資本が経済資本・文化資本の従属変数化しつつある状況であるとも考えられる.

HIRATSUKA, M. (2006). Dividing the Youth Transition System, the Concept of Competence, and Social Capital(A Society of Widening Disparities and its Challenge to Education). Japanese journal of educational research, 73(4), 391-402.