英英辞書の信仰は気持ち悪い

 よく「英和辞典をやめて英英辞典を使おう!英語脳を作ろう!」みたいな話があるんだけど、個人的にこの手の話はかなりうさんくさいとは思っている。

 だってさ、語彙力は端的に思考の限界そのものをあらわすわけ。語彙の豊富さが思考の豊かさとかなり高い相関関係にあることは、実験的にも確認されている。わたしたち日本人は日本語に対応する形で思考のキャパシティを拡げてきたわけだから、日本語(和訳)を参照しなければ、何が何だかわからなくなってしまうと思うのだ。

 たとえば、alter egoという単語。英英辞典を引くと、

Alter ego, which conbines alter(other) with ego(self), generally refers to someone with whom you are so close that you both do the same things, think alike, react similary, and are, in temperament, almost mirror images of each other.

と書いてある。これだけ読めば、なにがなんやらわけがわからなくなる。でも、英和辞典を引いて「分身」という訳語を確認すれば、「あぁなるほどな」と納得できる。つまり、わたしたちがこれまで世界を認識するために学んできた「世界の区切り方=概念」は日本語のものなのだから、それを参照せずに一から英語によって「世界の区切り方=概念」を学ばなければいけないとしたら、あまりに辛いと思うのだ。