わかった気になるけど、なにもわからない単語たち
要注意リスト。〜は多様なのだ。〜は多元的だ。〜は共生しうる。これらはマジックワードだけれど、慎重に用いなければ、何も語っていないに等しくなってしまう。だって結局は、「なんでもあり」って言っているだけだから。
相対主義って結構危険なところがある。危険というか、楽。ほんと楽。たとえば、自分の生き方を誰かに批判されたとき。「生き方は多様だよ。俺は俺、君は君」と言ったとしよう。このとき、「人はみなバラバラでいい」という相対主義に貫かれている人は、自分を批判した誰かの意見にまったく耳を貸さなくてもよいわけだ。つまり、相対主義は容易に自己弁護の論理になるし、相対主義を取ると、自分自身の世界が拡がっていかない可能性が高い。もし「世の中には唯一の正しい生き方がある」と素朴に信じている人だったなら、相手の意見を真剣に聞いて、きちんと議論するだろう。でも、「〜は多様なのだ」という言葉でまとめてしまうと、逆に自分が相対化される契機を失ってしまう。
だから、くれぐれも慎重でありたいなぁと思う。昔付き合っていたある女の子は、自分の適当な性格が嫌いだったらしく、いつも「あなたは倫理的におかしい」みたいなことを言っていた。そのとき、「人の生き方は多様なんだよ。君のいうこともわかる。でも、自分の生き方はこうだ」というロジックでかわしていたけれど、なにか卑怯だなぁとずっと感じていた。
あと、「AとBは相互作用している」というフレーズも危険。相互作用という言葉は何も語っていない。「どう相互作用しているの?」という質問に答えられないならば、「相互作用している」なんて発言してはいけないのだと思う。